2017年11月15日水曜日

その胸に宿した炎について ー ロン 'Bumblefoot' サール来日公演


Bumblefootことロン・サールの来日公演を観てきた。途方もない演奏技術と超人的な歌唱力を併せもった、いかなるときもユーモアを忘れないこの男の魅力の虜となって帰ってきたわたしが、ライブを観ながら感じたこと考えたことなどをつらつらと書き連ねてみるとしよう。なお、通名となって久しいBumblefootではなく、ここではロン・サールと呼ばせていただく。




ロン・サールは去る9月上旬にもアコースティック・ライブとギター・クリニックをあわせたかたちで来日しており、今回も発表が来日の約1週間前と、あまりに急な運びで当初は戸惑っていた。それでも天下のロン・サールを間近に観ることができるならと、すぐにチケットを取った。(ちなみに、ウェブ/アプリでチケットを購入するPeatixのみの取り扱いのため、紙チケットはない。今後、このようなケースはもっと増えていくのかもしれない。観に行ったライブのチケットをすべて手元に残している身としては、少し寂しい)

前回の来日公演はすこぶる評判がよく、諸事情により見逃してしまったことを残念に思っていただけに、この機を逃すわけにはいかなかった。そして、予想をはるかに上回る素晴らしいライブにいたく感動することとなったのだった。(観ているあいだは笑ってる時間の方がずっと多かったのだけど)


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夕刻よりの雨であった。"November Rain"だな、今日ライブでやったらおもしろいな、などとくだらないことを思いながら、行き慣れない青山までの道のりを歩く。靴はびしゃびしゃである。開演15分前に会場に着くとまだ行列ができており、冷たい雨のなか待たされる仕儀となった。




会場からはポロポロとギターの音が聞こえてくる。どうやら、すでにロンはステージにいるようだ。そう言えば、「Pre-show Show」と謳って開演前も演奏しているという話を、Twitterで聞いていたことを思い出す。到着を遅らせたのは迂闊だった。が、焦ったところで行列がなくなるわけでもなく、大人しく順番を待つ。




会場に入ると案の定、ロンがギターを弾いていた。片方のネックがフレットレスになっている、お馴染みのダブルネック・ギターだ。大きな月がバックに映し出されているのはこの会場(月見ル君想フ)の際立った特徴で、月を愛でてやまないわたしにとってとても好ましい仕様である。

ちょうどロンが「公式には、まだショウは始まってない」と言い訳じみたMCをしているところだった。ひとフレーズ弾いては足元のルーパー(録音したものをループで流す機材)でバッキングをループさせ、その上にソロを重ねていく。(このときはデヴィッド・ボウイの曲をやっていた。"Space Oddity"だったかな)

開演時間が近づくと「そろそろだ!そろそろ始めるよ!」とわざわざ自分から口にするロン。しばし「発声練習」と称して、様々なヘンテコフレーズを一同にやんわり強要しては、いたずらっぽく笑っている。甘い紅茶がいたくお気に入りのようで、一口飲んでからその美味しさを解説。(以後何回もおかわりすることになる)


客電が消えて暗転するとオーディエンスから大きな声があがり、いよいよライブの本番(というのもおかしな話だけど)が始まる。曲は本邦のお笑い番組などでお馴染み「泥棒のテーマ」こと"Pink Panther Theme"である。GUNS N' ROSES在籍時からやっていたとはいえ、そもそもこの曲を自らのテーマとして選んでしまう外連味が素晴らしいではないか。しかも、テーマをひとくさり弾いたらその後はテクニカルなフレーズの雨あられときている。早くもロンの演奏技術が桁違いどころか異次元レベルであることを思い知らされ、バカテクもここまできたらもはやギャグだよねと悟ったあたりに、元のテーマに戻ってきて曲は終了。お見事としか言いようのない導入部である。


フレットレス・ギターって、どれくらい弾くのが難しいものなのだろうか…

以後、ロンのソロ曲(インストは3曲くらいで、残りは歌もの)を中心に、カバー曲やリクエスト、さらには複数のリクエストをその場でマッシュアップするという尋常ならざる離れ業をこなしながら、終始楽しい雰囲気の中でライブは行われた。

自身の曲でも十分にその歌唱力は発揮されているけれど、THE POLICE、LED ZEPPELIN、GN'Rを歌うとその音域の広さにあらためて驚かされた。スティング、ロバート・プラント、アクセル・ローズのような超高音で歌うなんてことは専業ヴォーカリストでさえ極めて難しいことで、ましてギタリストでここまで歌える人なんて、ちょっと思いつかない。「ギタリストだけど歌がうまい」というレベルではなく、これはそもそもが「超人的なヴォーカリスト」と呼んで差支えのないほどの領域に達した者の歌なのだ。リラックスしたなかでのカバー/リクエストだからこそ、こちらも気楽に「すげー!」と言って済ませていられるだけで、ロンが本腰を入れて全力で歌ったら、世界中のハードロック系ヴォーカリストたちは裸足で逃げ去っていくだろう。(しかも、彼は歌いながらとんでもなくテクニカルなフレーズをノールックでバシバシ弾いていくのである。ギタリストたちは裸足どころでは済まされないだろう…)

また、この日が本邦初披露となった(らしい)マッシュアップには心底驚かされた。初めは、お客さんが着ていたTシャツを見てはJANE'S ADDICTION、VAN HALEN、GN'Rとワンフレーズ弾いたり曲をカバーしたりしていた。それがリクエスト制となって、アリス・クーパー、ART OF ANARCHY、QUEEN等のカバーとなり、そのうちに一斉に様々なバンド名が投げかけられるようになってしまい、「わかったわかった、じゃあそれを一度にやってみよう」とロンが言い出したのが始まりだった。それも、「ジミヘン風ギターで、ALICE IN CHAINSをDEF LEPPARDの"Love Bites"の歌詞で歌ってみよう」という、無茶にもほどがありすぎる船出であった。やってる途中でAICは消えてしまったのだけど、本当にジミヘン風"Love Bites"になってて笑ってしまう。

以後、リクエストを募ると「(バンド名)OK. And?」とすべてマッシュアップ化しようとするロン。こうして、「Could be done! It could be done!(いける、たぶんいけるわ)」なるお言葉とともに、METALLICAとMR.BIG、オジー・オズボーンとフランク・ザッパ、PEARL JAMとJOURNEY、YESとFAITH NO MOREなどという珍妙なキメラが続々と誕生することとなったのであった。(信じられないかもしれないが、YESの"Roundabout"リフとFNMの"From Out Of Nowhere"歌メロの相性はバッチリだった。あと5分もやっていたら完成形に達していたのではないだろうか)

まったく、とんでもない音楽的反射神経と勘のよさである。DJと違って、その場で演奏と歌唱を要求されてしまうだけに恐ろしくハードルの高い離れ業だ。と言うか、これを即興でできる人が他にいるとは、とても思えない。それでいて、観ている分にはまごうことなきエンターテインメントなのである。世界最高峰の音楽家が、率先して道化役を買って出ているわけだ。宝の持ち腐れも、ここまでくると一周どころか五周くらい回ってどこを切ってもアートである。いや、実際問題、ロンは文字通り「Art(技芸)」のひとなのだった。




ロンのソロ作を聴いたことはあるだろうか。わたしは2015年リリースの最新作『Little Brother Is Watching』しか聴いたことがない。それ以外の作品は入手困難なCDが多く、ダウンロードで聴くことはできるものの、やはり形として手元に置きたいのでDLは見送っているのだ。ただ、この最新作が素晴らしくて、21世紀以降のハードロック・アルバムのなかでも指折りの傑作と言える、ロンの豊かな才能をこれでもかと教えてくれる作品となっている。(いずれ、「歌うギタリストの隠れた名盤10選」みたいなブログをかいてみるつもり)

やや欧州的な湿り気とアメリカンなポップさが適度に融合し、そこかしこにQUEENを血肉化していなければ出てこないフレーズやコーラスが顔をのぞかせる、メロディアスでドラマティックなハードロック。そんな正統派な作風にあってもなお、飛び出てくるトリッキーなギターソロの数々。しかしそれは手癖などではなく、楽理的に計算されたフレージングなのだ。

ライブを観始めて早々に、タガの外れたアヴァンギャルドなソロが、実はとても「キャッチー」であることに気づいた。楽曲が細部に至るまでかっちり構築されているからこそ、各セクションにおけるソロは無駄に長くなることがなく、短いパッセージの連続体として次々と変幻自在に展開していく。だから聴きやすく(意外にも)覚えやすいのだ。これは「トチ狂ったトムとジェリー」のようなインストものでも同じことで、観ていて(聴いていて)退屈することがない。だいたい、「聴き慣れないおかしなフレーズ」という時点でそもそも「おもしろい」のである。

音楽理論の途方もない蓄積と、そのアクロバットを可能とする驚異的な技術、そして湯水の如く湧き出てくる尽きることない大胆な発想。綜合的な音楽家としてロン・サールはかくも高みにあるというのにしかし、この人はなんと気さくでチャーミングなのだろう。演奏しながら編み込んである髭をなでたり髭でギターネックを叩いたり、大急ぎで離陸するパイロットみたいなノリで早口にまくしたてつつギターのセッティングをしたり、"Hey Jude"の演奏中に席を立ったお客さんに「ちょっ、どこ行くん?ちょい待って!待って待って待って!ビートルズやぞ!」と大慌てで声をかけたりと、片時もユーモアを忘れない御仁なのだ。と言っても、「エンタメの本場=アメリカ」的な、プロフェッショナル(職業的)な技術としてのステージングというドライさとは無縁。あくまでも自然体でその誠実な人柄が伝わってくるような、親しみやすさばかりを感じた。

音楽を、ギターを、歌を愛し、楽しむこと。そんな自分でいられることの喜びと感謝を、この人は絶やしたことがないのではないだろうか。だからこそ、オーディエンスであるわたしたちをここまで尊重したパフォーマンスとなるのではないか。その音楽的才能以前に、音楽への大きな愛を胸に炎として宿したひと。天衣無縫なこどものようでいて、自分の存在意義をはっきりと認識している真に大人なひと。彼がGN'Rで長きにわたりアクセルを支え活躍してくることができたのも、当然だという気がした。ライブを観ていて、そう思わざるを得なかった。



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オマケ



終演後、おもむろに袋を取り出したロン、「これは……ソーセージみたいだけど……甘いんだ。しかもクランチーで……甘いんだ。(食べる)うん、おいしい」などと(差し入れでもらったらしい)かりんとうを誉めそやす。たいていの技巧派ギタリストが不思議とそうであるように、彼もやっぱりどこか天然さんなのだった。


2017年11月10日金曜日

『BURRN! 12月号』「CHAOS ASSAULT」ライブレポ裏話


驚くべきことに、現在発売中の『BURRN! 12月号』にわたしの書いた一文が掲載されております。DOOM、SIGH、CHURCH OF MISERY、MANTAR(独)が出演したイベント「CHAOS ASSAULT vol.1」のライブ・レポートです。(ちなみに、本名ローマ字で記名されてます)



「METAL FOCUS」枠のため、目次にはわたしの名前はありませんけど、確かにその記事はB!誌に載っているのです。長年、ただの一読者でしかなかったわたしですので、何とも不思議な感じがいたします。(まあ、B!ムックの『Ultimate METALLICA』にはすでに寄稿してますけど、それとこれとはやっぱり違うのです)

初めて買ったB!誌は、奇しくもやはり12月号でした。それは1995年の12月号で、METALLICAのラーズ・ウルリッヒが表紙でした。「80年代の名盤」特集に惹かれて、近くの蔦屋書店にて購入したのです。わたしは中学3年生でバリバリの高校受験生でした。でも、勉強はもうどうでもよかった。次から次へと洋楽のアルバムを聴き漁ることが、楽しくて仕方なかったのです。音楽という「新大陸の地図」を手に入れた少年にとって、あれはまさに冒険の日々でした。

さて、あれから22年、こんなにみっともないおっさんになっているとはさすがに思いもしなかったですけど、あの頃「BURRN!の記者になれたらすごいなぁ!」なんて純粋に思っていた自分に、「ユー、いつかB!で書くことになるよ!」と声を掛けたらどんな反応をしただろう、などとふと考えます。たぶん、きっと、いや間違いなく、喜んだことでしょう。

もっとも、依頼を受けたわたしは喜ぶ前に当惑してしまったのでした。と言いますのは、ライブを観た後にライブレポの依頼が来たからなんですね。しかも、文字数などが決まってレポを書いたのは、ライブを観たちょうど2週間後。ただ、大変だったのは時間が空いてしまったことではなく、文字数の少なさでした。あれやこれやと試行錯誤した結果、3バージョン書いて、最終稿がB!誌に載っています。

というわけで、ここにバージョン①と②を載せてみましょう。わたしが文章をどう足したり引いたりしたのか、おわかりいただけるはずです。(読みやすいように、B!誌に載ってないところを色付けしておきましょう)

まずは、バージョン①の「MANTARメイン」版です。

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 エクストリーム・メタル・シーンに、注目すべき新たなイベントが誕生した。9月23日、24日と二日間にわたって渋谷GARRETにて開催された「CHAOS ASSAULT」である。第一弾となる今回は、轟音ヘヴィ・ロックの申し子Boris、アヴァンギャルドなブラック・メタルの異端児SIGH、ジャンルレスなヘヴィネスの求道者DOOM、新編成により再始動したドゥーム・メタルの伝説CHURCH OF MISERYからなる精鋭が国内から招集され、これが初来日となるドイツ産ヘヴィ・デュオMANTARを迎え撃つという、タイトル通り「混沌の襲撃」と呼ぶにふさわしい激烈な二日間となった。本稿では二日目のMANTARのレポートをお届けする。
 幕が開くと、ドラムセットがステージ上手に、中央を向くようにセッティングされている。そこに、古代ローマ帝国の剣闘士もかくや、とばかりに逞しい上半身裸の大男が鎮座する。ドラマーのエリンチである。やはり上半身裸の、キャップを後ろ向きにかぶった痩せた男がステージ下手に陣をとる。ヴォーカル兼ギターのハンノだ。向かい合った二人はおもむろに音を鳴らし始め、間髪入れず1曲目の"The Stoning"を炸裂させる。歌っているとき以外はじっとしていられないハンノは始まったその瞬間からの全力パフォーマンスで、早くもキャップをふっ飛ばしてしまった。一方のエリンチは、圧巻のパワー・ドラミングで楽曲に図太い楔を打ち込んでいく。
 それにしても、本当にこれが二人組の出す音なのかという凄まじい音圧である。ギターにベース弦を張り、さらにベース・アンプも使っているという音作りの妙はもちろんのこと、それ以前に「エクストリーム・メタルかくあるべし」というアティテュードがあってこその爆音だろう。
 ライブが進むにつれて、音による殴り合いとでも言うべきステージの熱さがフロアに伝播し、観客の反応も次第に大きくなっていく。清涼感のかけらもない楽曲ばかりがつづくというのに、格闘技観戦にも似た興奮と清々しさがあるのだ。
 二人のキャラクターが違うのもいい。ハンノが「ありがとう。日本に来たのは初めてだが、とても嬉しいよ」とごくごく真面目に感謝の意を表明したというのに、エリンチは「正確には二日目の夜だけどな」と冷静にツッコミを入れてくるのである。これにはすかさずハンノも「ああ、そうだその通りだよファッキュー!」と応酬。まことに愉快な幕間劇であった。
 MANTARの音楽性はシンプルだ。ヘヴィなリフとヘヴィなドラムがぶつかり合い、そこに薄汚いヴォーカルが乗るだけなのだから。しかし、その簡潔さは逆説的に、様々なジャンルを思い起こさせる。彼らの原初的なスタイルが、多様なエクストリーム・メタルの諸ジャンルに通じているからだろう。言わば、MANTARのメタルは鋳型に入れられる前の、どろどろに白熱した金属なのである。その音楽の形容に様々なジャンル名が動員されるのは、当然のことだったのだ。
 サークル・ピットの出現にまで至る盛り上がりで、イベントは終了。他の出演バンドのパフォーマンスも申し分なく、終演後、早くも第二弾の「襲撃」が望まれたのは言うまでもない。

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このMCのくだり、よく覚えていたのでカットするには忍びなかったのですが、ここでご紹介できたからよしとしましょう。

つづいて、バージョン②の「4バンドほぼ平均」版です。

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 エクストリーム・メタル・シーンに、注目すべき新たなイベントが誕生した。9月23日、24日と二日間にわたって渋谷GARRETにて開催された『CHAOS ASSAULT』である。第一弾となる今回は、轟音ヘヴィ・ロックの申し子Boris、ブラック・メタルの異端児SIGH、ジャンルレスなヘヴィネスの求道者DOOM、新編成により再始動したドゥーム・メタルの伝説CHURCH OF MISERYからなる精鋭が国内から招集され、これが初来日となるドイツ産ヘヴィ・デュオMANTARを迎え撃つという、タイトル通り「混沌の襲撃」と呼ぶにふさわしい激烈な二日間となった。二日目のもようをお届けする。
 大ベテランのDOOMがトップを飾った。前半に旧作、後半に新作からの楽曲を配したセットリストでその比類なき個性を提示し、早くも会場を異世界に変えてしまう。スラッシュ・メタルをベースとしつつも、ジャズやプログレに通じる知的なアプローチを見せたかと思えば、パンク・ロックやハードコアを思わせる衝動的な性急さが噴出するといった変幻自在の楽曲に翻弄される。あまりに独特なフレットレス・ベースのフレージングも気持ち悪くて最高である。
 二番手はSIGHだ。音楽性はシンフォニックかつアヴァンギャルドなブラック・メタルながらも、そのライブ・パフォーマンスはシアトリカルなギミック満載の「ショウ」であり、ショック・ロックの系譜に連なると言えよう。魔導書からは炎が立ち上がり、Dr.Mikannibal<vo/sax>は血にまみれる。SIGHの首謀者である川嶋未来<vo/fl>は黒装束に身を包み、この闇の世界を差配する。楽曲の創造性と視覚的なエンターテインメント性、その両輪の噛み合った見事なステージだった。
 国内でのライブは3年ぶり、しかも新編成のお披露目ということもあって、CHURCH OF MISERYはこの日もっとも高い注目を集めていた。バンドが登場すると、殺伐とした緊迫感に気合十分の熱気が混じり、ダウナーかつアッパーという一種異様な空気に会場が満たされる。誰がステージにたっていようと、彼らのライブがいつも同等のカタルシスを与えてくれるのはやはり、その音楽性が強度を失わないままに不変でありつづけているからであろう。今後の活動に期待大である。
 そしてMANTARが登場する。ステージ上手に、中央を向くようセッティングされたドラムセットに逞しい上半身裸の大男が鎮座する。ドラマーのエリンチである。やはり上半身裸の、キャップを後ろ向きにかぶった痩せた男が現れ、ステージ下手に陣をとる。ヴォーカル兼ギターのハンノだ。向かい合った二人が音を出すや否や、衝動が土石流の如き勢いでこちらに迫ってくる怒涛のライブとなった。それにしても、本当にこれが二人組の出す音なのかという凄まじい音圧である。音作りの妙はもちろんのこと、それ以前に「エクストリーム・メタルかくあるべし」というアティテュードがあってこその爆音だろう。音による殴り合いとでも言うべきステージの熱さがフロアに伝播し、観客の反応も次第に大きくなっていく。
 サークル・ピットの出現にまで至る盛り上がりで、イベントは終了。終演後、早くも第二弾の「襲撃」が望まれたのは言うまでもない。

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こんな感じです。で、この①②を足して割って少し言葉遣いを変えた③が、B!誌に掲載されることとなりました。短い記事で恐縮ですが、お読みいただけたら幸いです。

ついでに、ウェブ上の記事を紹介しておきましょう。BARKSの記事は参考にしました。METAL MASTER METALというサイトは、つい昨夜、たまたま知ったばかりです。

BARKS (DAY-1 DAY-2)
METAL MASTER METAL


それにしても、まさかここまで自分の守備範囲から外れたもので(エクストリーム・メタルは、それほど詳しいわけではないのです)B!誌デビューを果たすことになるとは……。まことに人生は驚きの連続であります。



2017年11月8日水曜日

ブログ再開のお知らせ


前ブログ「The flower seems out of reach」をやめてから、3年ほど経ちました。

もっとも、当時はブログをやめるつもりはなく、当初は、単に新しい職に就いてあたふたしていただけというのが真相なのですけど(最近は辞めようかどうしようかとあたふたしてますが)、そうこうしているうちに「まとまった文章を書けなくなってしまった」のでした。

何度もブログを再開しようとしましたけど、ダメでした。いつしか、書くことが怖くなっていたのです。いざ書こうとすると、そのたびに変な汗が出てきて何もしないまま横になってしまう始末で、ほとんど反射的にブログを書いていた2010年~2012年が我がことながら信じられない、といった有様にまで落ち込んでいたのでした。

また一方で、誰にも告げずにツイートをまとめたブログを1年くらい、余所でやっていたこともあります。そう、まとまったものは書けなくても、ツイート連投なら何とかできていたのです。ツイートにアイディアをメモとして凝縮し、後で長めの文章に解凍していたのですけど、そのブログは消してしまいました。というのは、「解凍した文章」よりも、元のツイートの方が出来がいいと、気づいてしまったからなんですね。

それでも、「書く」とお約束したいくつものテーマが、アタマを去ることはありませんでした。いつか必ず、読みたいと言ってくれた方々へ届けなければならない、との思いはつねにありました。それでも、というか、だからこそ、なのかもしれませんが、書くという地点に(具体的には、Bloggerのブラウザを開くだけなんですけど)辿りつくことさえできませんでした。「書ける」という確信を筆頭に、わたしはあらゆる自信を失くしていたのです。

転機となったのは、雑誌原稿の依頼です。これには驚きました。『Ultimate METALLICA』のアルバム評と、『MASSIVE vol.26』のLUNA SEAライブ評が、昨年末に舞い込んできたのです。

昨年開催されたHEAD PHONES PRESIDENTのロック・ミュージカル「STAND IN THE WORLD」のパンフレット制作や、2014年のANZAソロ・ライブでのみ販売された『ANZA☺LIFE』のテキスト執筆など、HPP関連ではいくらか文章を書いていましたけど、雑誌に書いたことなど一度もなかったので単純に驚きました。そして、引き受けたからには「書かなければならない」状況となってしまったのでした。

いずれの文章も、「多めに書いてひたすら削る」という方法でかたちにしました。自分の書いたものが、当たり前のような顔をして誌面に掲載されていること、その不思議さには妙な感慨がありました。同時に、「あれよりもいいものが書けたはず」という思いもありました。

それなら、ブログで書けばいいと思うようになりました。

ただ、それでもやっぱり、ダメでした。

でも、もう残された時間は少ないかもしれない、との思いが募ってきました。いつまでも、いまの環境のままでいられるわけがないのだと。「その時」が来る前に、「書いておかなければならなかったもの」をすべて、出し切ってしまわないと死んでも死にきれないだろうと、そんな思いが強くなる一方なのでした。

だから、もう一度、ブログを一から始めてみようと思います。
少なくとも年度末までは現状維持となったので、そこまでは可能な限り書く所存です。

あらためて、よろしくお願いいたします。

(なお、ブログのデザインは暫定的なもので、ちょくちょく変わるかもしれません。ご了承ください。)



その胸に宿した炎について ー ロン 'Bumblefoot' サール来日公演

Bumblefoot こと ロン・サール の来日公演を観てきた。途方もない演奏技術と超人的な歌唱力を併せもった、いかなるときもユーモアを忘れないこの男の魅力の虜となって帰ってきたわたしが、ライブを観ながら感じたこと考えたことなどをつらつらと書き連ねてみるとしよう。なお、通名とな...