2017年11月10日金曜日

『BURRN! 12月号』「CHAOS ASSAULT」ライブレポ裏話


驚くべきことに、現在発売中の『BURRN! 12月号』にわたしの書いた一文が掲載されております。DOOM、SIGH、CHURCH OF MISERY、MANTAR(独)が出演したイベント「CHAOS ASSAULT vol.1」のライブ・レポートです。(ちなみに、本名ローマ字で記名されてます)



「METAL FOCUS」枠のため、目次にはわたしの名前はありませんけど、確かにその記事はB!誌に載っているのです。長年、ただの一読者でしかなかったわたしですので、何とも不思議な感じがいたします。(まあ、B!ムックの『Ultimate METALLICA』にはすでに寄稿してますけど、それとこれとはやっぱり違うのです)

初めて買ったB!誌は、奇しくもやはり12月号でした。それは1995年の12月号で、METALLICAのラーズ・ウルリッヒが表紙でした。「80年代の名盤」特集に惹かれて、近くの蔦屋書店にて購入したのです。わたしは中学3年生でバリバリの高校受験生でした。でも、勉強はもうどうでもよかった。次から次へと洋楽のアルバムを聴き漁ることが、楽しくて仕方なかったのです。音楽という「新大陸の地図」を手に入れた少年にとって、あれはまさに冒険の日々でした。

さて、あれから22年、こんなにみっともないおっさんになっているとはさすがに思いもしなかったですけど、あの頃「BURRN!の記者になれたらすごいなぁ!」なんて純粋に思っていた自分に、「ユー、いつかB!で書くことになるよ!」と声を掛けたらどんな反応をしただろう、などとふと考えます。たぶん、きっと、いや間違いなく、喜んだことでしょう。

もっとも、依頼を受けたわたしは喜ぶ前に当惑してしまったのでした。と言いますのは、ライブを観た後にライブレポの依頼が来たからなんですね。しかも、文字数などが決まってレポを書いたのは、ライブを観たちょうど2週間後。ただ、大変だったのは時間が空いてしまったことではなく、文字数の少なさでした。あれやこれやと試行錯誤した結果、3バージョン書いて、最終稿がB!誌に載っています。

というわけで、ここにバージョン①と②を載せてみましょう。わたしが文章をどう足したり引いたりしたのか、おわかりいただけるはずです。(読みやすいように、B!誌に載ってないところを色付けしておきましょう)

まずは、バージョン①の「MANTARメイン」版です。

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 エクストリーム・メタル・シーンに、注目すべき新たなイベントが誕生した。9月23日、24日と二日間にわたって渋谷GARRETにて開催された「CHAOS ASSAULT」である。第一弾となる今回は、轟音ヘヴィ・ロックの申し子Boris、アヴァンギャルドなブラック・メタルの異端児SIGH、ジャンルレスなヘヴィネスの求道者DOOM、新編成により再始動したドゥーム・メタルの伝説CHURCH OF MISERYからなる精鋭が国内から招集され、これが初来日となるドイツ産ヘヴィ・デュオMANTARを迎え撃つという、タイトル通り「混沌の襲撃」と呼ぶにふさわしい激烈な二日間となった。本稿では二日目のMANTARのレポートをお届けする。
 幕が開くと、ドラムセットがステージ上手に、中央を向くようにセッティングされている。そこに、古代ローマ帝国の剣闘士もかくや、とばかりに逞しい上半身裸の大男が鎮座する。ドラマーのエリンチである。やはり上半身裸の、キャップを後ろ向きにかぶった痩せた男がステージ下手に陣をとる。ヴォーカル兼ギターのハンノだ。向かい合った二人はおもむろに音を鳴らし始め、間髪入れず1曲目の"The Stoning"を炸裂させる。歌っているとき以外はじっとしていられないハンノは始まったその瞬間からの全力パフォーマンスで、早くもキャップをふっ飛ばしてしまった。一方のエリンチは、圧巻のパワー・ドラミングで楽曲に図太い楔を打ち込んでいく。
 それにしても、本当にこれが二人組の出す音なのかという凄まじい音圧である。ギターにベース弦を張り、さらにベース・アンプも使っているという音作りの妙はもちろんのこと、それ以前に「エクストリーム・メタルかくあるべし」というアティテュードがあってこその爆音だろう。
 ライブが進むにつれて、音による殴り合いとでも言うべきステージの熱さがフロアに伝播し、観客の反応も次第に大きくなっていく。清涼感のかけらもない楽曲ばかりがつづくというのに、格闘技観戦にも似た興奮と清々しさがあるのだ。
 二人のキャラクターが違うのもいい。ハンノが「ありがとう。日本に来たのは初めてだが、とても嬉しいよ」とごくごく真面目に感謝の意を表明したというのに、エリンチは「正確には二日目の夜だけどな」と冷静にツッコミを入れてくるのである。これにはすかさずハンノも「ああ、そうだその通りだよファッキュー!」と応酬。まことに愉快な幕間劇であった。
 MANTARの音楽性はシンプルだ。ヘヴィなリフとヘヴィなドラムがぶつかり合い、そこに薄汚いヴォーカルが乗るだけなのだから。しかし、その簡潔さは逆説的に、様々なジャンルを思い起こさせる。彼らの原初的なスタイルが、多様なエクストリーム・メタルの諸ジャンルに通じているからだろう。言わば、MANTARのメタルは鋳型に入れられる前の、どろどろに白熱した金属なのである。その音楽の形容に様々なジャンル名が動員されるのは、当然のことだったのだ。
 サークル・ピットの出現にまで至る盛り上がりで、イベントは終了。他の出演バンドのパフォーマンスも申し分なく、終演後、早くも第二弾の「襲撃」が望まれたのは言うまでもない。

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このMCのくだり、よく覚えていたのでカットするには忍びなかったのですが、ここでご紹介できたからよしとしましょう。

つづいて、バージョン②の「4バンドほぼ平均」版です。

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 エクストリーム・メタル・シーンに、注目すべき新たなイベントが誕生した。9月23日、24日と二日間にわたって渋谷GARRETにて開催された『CHAOS ASSAULT』である。第一弾となる今回は、轟音ヘヴィ・ロックの申し子Boris、ブラック・メタルの異端児SIGH、ジャンルレスなヘヴィネスの求道者DOOM、新編成により再始動したドゥーム・メタルの伝説CHURCH OF MISERYからなる精鋭が国内から招集され、これが初来日となるドイツ産ヘヴィ・デュオMANTARを迎え撃つという、タイトル通り「混沌の襲撃」と呼ぶにふさわしい激烈な二日間となった。二日目のもようをお届けする。
 大ベテランのDOOMがトップを飾った。前半に旧作、後半に新作からの楽曲を配したセットリストでその比類なき個性を提示し、早くも会場を異世界に変えてしまう。スラッシュ・メタルをベースとしつつも、ジャズやプログレに通じる知的なアプローチを見せたかと思えば、パンク・ロックやハードコアを思わせる衝動的な性急さが噴出するといった変幻自在の楽曲に翻弄される。あまりに独特なフレットレス・ベースのフレージングも気持ち悪くて最高である。
 二番手はSIGHだ。音楽性はシンフォニックかつアヴァンギャルドなブラック・メタルながらも、そのライブ・パフォーマンスはシアトリカルなギミック満載の「ショウ」であり、ショック・ロックの系譜に連なると言えよう。魔導書からは炎が立ち上がり、Dr.Mikannibal<vo/sax>は血にまみれる。SIGHの首謀者である川嶋未来<vo/fl>は黒装束に身を包み、この闇の世界を差配する。楽曲の創造性と視覚的なエンターテインメント性、その両輪の噛み合った見事なステージだった。
 国内でのライブは3年ぶり、しかも新編成のお披露目ということもあって、CHURCH OF MISERYはこの日もっとも高い注目を集めていた。バンドが登場すると、殺伐とした緊迫感に気合十分の熱気が混じり、ダウナーかつアッパーという一種異様な空気に会場が満たされる。誰がステージにたっていようと、彼らのライブがいつも同等のカタルシスを与えてくれるのはやはり、その音楽性が強度を失わないままに不変でありつづけているからであろう。今後の活動に期待大である。
 そしてMANTARが登場する。ステージ上手に、中央を向くようセッティングされたドラムセットに逞しい上半身裸の大男が鎮座する。ドラマーのエリンチである。やはり上半身裸の、キャップを後ろ向きにかぶった痩せた男が現れ、ステージ下手に陣をとる。ヴォーカル兼ギターのハンノだ。向かい合った二人が音を出すや否や、衝動が土石流の如き勢いでこちらに迫ってくる怒涛のライブとなった。それにしても、本当にこれが二人組の出す音なのかという凄まじい音圧である。音作りの妙はもちろんのこと、それ以前に「エクストリーム・メタルかくあるべし」というアティテュードがあってこその爆音だろう。音による殴り合いとでも言うべきステージの熱さがフロアに伝播し、観客の反応も次第に大きくなっていく。
 サークル・ピットの出現にまで至る盛り上がりで、イベントは終了。終演後、早くも第二弾の「襲撃」が望まれたのは言うまでもない。

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こんな感じです。で、この①②を足して割って少し言葉遣いを変えた③が、B!誌に掲載されることとなりました。短い記事で恐縮ですが、お読みいただけたら幸いです。

ついでに、ウェブ上の記事を紹介しておきましょう。BARKSの記事は参考にしました。METAL MASTER METALというサイトは、つい昨夜、たまたま知ったばかりです。

BARKS (DAY-1 DAY-2)
METAL MASTER METAL


それにしても、まさかここまで自分の守備範囲から外れたもので(エクストリーム・メタルは、それほど詳しいわけではないのです)B!誌デビューを果たすことになるとは……。まことに人生は驚きの連続であります。



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